『Wicked: For Good』
2025年3月7日より日本で劇場公開された『Wicked』のPart 2。2026年3月6日より劇場公開中だ。原作は言わずもがな『オズの魔法使い』で、『Wicked』はその外伝にあたる。2003年よりブロードウェイミュージカル公演が始まり2026年現在でも公演しているモンスターミュージカルである。監督は「クレイジー・リッチ!」などで知られるジョン・M・チュウ。
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前作で袂を分かったエルファバ(西の悪い魔女)とグリンダ(いい魔女)。でもそれは、ケンカ別れではなく、それぞれが思う“正しいこと”を達成するため。二人は共に友の幸せを願っている。
『Wicked』はこの二人が主人公であるから、観客を引き付けるキラキラ設定。エルファバは最初こそすべてを諦めていた女性だが、”それは違うと思う”と自分の意見をはっきり伝え、逆境に立ち向かう強い女性へと変わっていく。グリンダはいわゆる、いいとこのお嬢ちゃん。見た目も美しいことから、とにかく人に好かれる。彼女にとっても人に”好かれる”ことが大事であるものの、“本当になりたい自分”とのギャップに悩む。ちょっと頭が軽いため、そこをマダム・モリブルにいいように扱われる。
どちらのキャラもステキで、「エルファバみたいに意志の強い人になりたい」、「グリンダみたいにポジティブでルックスも魅力的な人って憧れる」、なーんて思う人は多いと思う。私もエルファバの強さにとても心惹かれる。でも、あまりにもキラキラすぎて、こういうキャラになるには、ちょっとやそっとじゃムリそうだ。そこで、このPart2でとても目を引いたのはエルファバの妹ネッサローズ。出番は少ないものの、彼女がいるからこそ、主役の二人が目立っていると感じた。
私は「どの映画が一番好き?」という質問に、必ず『オズの魔法使い』と答えるほど、オズの魔法使い狂。おそらく、一番最初に見た映画だと思う。家にビデオがあったのだが、今思えば、あれはNHKで放送された吹替を録画したものだったのだろう。あまりにもしつこく見るもんだから、親が「(何度も見せられて)具合が悪くなる!」と小学生だった私に文句を言ってきたほどだ(笑)
『Wicked』でネッサローズが出てきたときに、「お~、彼女が東の悪い魔女になるのだな」と思ったが、Part1からの様子で、どう闇落ちするのか想像がつかなかった。しかし、なんのなんの。恋って、人を美しくも醜くもしますのね。大好きなボック(マンチキン)が、実はグリンダに惚れていたことを打ち明けられ静かに激昂。父にかわり総督となったネッサローズは、グリンダのいるエメラルドシティに行こうとするボックを法的に阻止する。その後、どうしてもグリンダの元に向かいたいボックはネッサローズに懇願。いよいよ歯止めが利かなくなったネッサローズは、偶然訪れていたエルファバのグリマリー(魔法の呪文の本)を使い、呪文を唱える。だが、正しく唱えることができないネッサローズが放った呪文は、ボックの心臓に苦痛をもたらす。苦しむボックを見て、ネッサローズはエルファバに助けを求め、エルファバはある呪文を唱える。ボックの苦しみは治まり、一安心。と思いきや、ボックはブリキ男へと変身させられてしまっていた。何が起こり、なぜブリキ男の姿になってしまったのか分からないボック。発狂してネッサローズに問い詰めた時に、彼女から出た言葉が、「あ~。人間ってそうよね」と思わせるものだった。ネッサローズの元にエルファバが訪れてからの会話で、ネッサローズの闇が浮き彫りになっていったが、ボックへの返答が私の中でとどめとなった。「一番胸くそわりーキャラだけど、一番人間らしいキャラだわ」と。
もちろん、オズの魔法使いとマダム・モリブルが劇中の敵役だが、「実はやべー奴でした」っていうネッサローズの方が、インパクトがあって、「お前が一番WICKEDじゃん!」となった。だから、ドロシーの家で潰されるところは、「ふ、ざまぁー」と思ったさ。ボックを素直にグリンダの元に行かせてたら、同情の余地はあったのにねぇ…
全体的に前作に続き、オズの魔法使いとのつながりをよく練られたプロットだったと思うが、個人的にはボックのブリキ男とライオンのキャラに物申したい。この作品は“外伝”であって「オズの魔法使い」ではないことは承知している。しかし、オズの魔法使いのブリキ男とライオンのキャラとのズレがとても気になった。
ブリキ男は「心臓がない=感情がない」から、オズの魔法使いに心臓をもらいに行く。 『Wicked』のブリキ男は、ブリキ男になる経緯が経緯なだけに、「怒り」が前面に出るのはしかたない。だけど、ブリキ男は、元来とても優しい人。“怒り”や“憎しみ”から一番遠い存在だ。『オズの魔法使い』でも、心臓をもらうときに「心臓はないほうがいいよ。感情があるから人は傷つくんだ」と言われるも、「それでもほしいんです」と答えて心臓をもらう。「人の痛みを感じたい」人なんだよね。常に人に寄り添い、暖かさを分け与えるブリキ男が、「魔女を殺せー!」と雄たけびをあげるところは、「似合わねぇー」と思ってしまった。一方、ライオンは「勇気がない」から、勇気をもらいに行く。『Wicked』のライオンは、常時、怯えてる。オズの魔法使いでもそうだが、実はお茶目でお調子者のところがあり、憎めないキャラなのだ。『Wicked』では、ビクビクさばかりが描かれていて、ライオンのかわいさが欠けていた。これはちょっともったいなかった。
さてさて、上映後、若いカップル2組の会話が耳に入った。
「心臓が痛いって言って、ブリキになったの、なんで?」
ふふふ、それはね、ブリキ男には「心臓がない」がないからだよ。エルファバは「痛む心臓」を取り除き、心臓なしでも生きられるブリキ男にしたんだよ。
「オズの魔法使いはエルファバのお父さんで、エルファバのお母さんとの2つの世界の子だからパワーがあったって、なんで2つの世界の子だとパワーがあるの?」
オズの魔法使いはただ単に「魔法が使えない人」ではないんだよ。オズの魔法使いはドロシーと同じカンザス出身。つまり、異世界転生人なのだ(まぁ、この人はオズに気球でフワフワたどり着いたんだが)。異世界人とオズ人。元来、交わることのない種族が交わったことで予期せぬ化学反応が起きたんじゃないかな?
カップルに話しかけそうになったぜ。